おととい訃報ふほうが届いた俳優の樹木希林さんは子どもの頃、運動が苦手だった

おととい訃報ふほうが届いた俳優の樹木希林さんは子どもの頃、運動が苦手だった。小学6年生の水泳大会で選んだ種目はクロールや平泳ぎでなく歩き競争である。泳げない子向けの競技で、ほかは1、2年生ばかり。あっという間にゴールして1等賞を取った

同級生から軽蔑されながらも賞品をもらい、得した気分になった。これで私はきっと味をしめたんだね。いいんだ、これでって。そのまま来ちゃったわね、私の人生。昨年のアエラ誌で語っていた

他人と比べない。周りの価値観にとらわれない。そんなスタイルで役者人生を貫いた。だからなのか、呼び名に困る人でもある。名脇役ではぴったり来ないし、怪優や名優も違う気がする。樹木希林としか、言いようがない

おばあちゃん役ながら、沢田研二さんのポスターを前にジュリー!と身もだえする。写真フィルムのでは美しい人はより美しく、そうでない方はそれなりにと言われ、がっかりする。そんなコミカルな演技に、いつしか重厚さが加わっていた

病との付き合い方も、この人ならではであった。全身に転移したがんを受け入れ、振り回されはしない。最後まで仕事を続ける姿は、生きることを楽しむかのようだった。人生の素晴らしさも悲しさも包み込んだ作品が、残された

現在まで、それなりに生きてきたように、それなりに死んでいくんだなって感じでしょうか。ひょうひょうとした言葉をいくつも残して、去ってしまった。

9/18朝日新聞天声人語